大判例

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神戸地方裁判所 昭和25年(ワ)823号 判決

原告 復興金融金庫

被告 川村自転車株式会社

一、主  文

被告が昭和二五年六月二四日売買により訴外株式会社川村自転車製造所より別紙目録<省略>記載の不動産を譲受けた行為はこれを取消す。

被告は原告に対して、右不動産につき、神戸地方法務局兵庫出張所昭和二五年六月二六日受付第九三七五号を以てなされた同年同月二四日付売買による所有権取得登記の抹消登記手続をしなければならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一乃至第三項同旨の判決を求め、その請求の原因として、原告は昭和二三年一二月二九日その代理店である株式会社日本勧業銀行神戸支店を通じて株式会社川村自転車製造所に対しその設備資金として金一、〇〇〇、〇〇〇円を支払日昭和二四年九月一〇日遅延損害金日歩四銭と定めて貸与した。しかるに右会社は同年一一月二九日右貸金の元金内入として金一五〇、〇〇〇円を支払つたのみでその余の元金及び遅延損害金の支払をしなかつたので、右貸金債権は昭和二五年六月二四日現在、元金八五〇、〇〇〇円元金一、〇〇〇、〇〇〇円に対する昭和二四年九月一一日より同年一一月二九日までの日歩四銭の割合による遅延損害金三二、〇〇〇円元金八五〇、〇〇〇円に対する昭和二四年一一月三〇日より同二五年六月二四日までの同様の割合による遅延損害金七〇、三八〇円合計金九五二、三八〇円となつていた。ところで、右会社の営業成績は右会社が原告から右金一、〇〇〇、〇〇〇円を借受けた頃よりだんだん低下し、資産も減少し、右六月二四日頃には、別紙目録記載の不動産が右会社の唯一の財産となつていた。したがつて右不動産を他え譲渡すれば原告の右債権が害せられることは明かであつたのに、右会社はあえて、同日右不動産を被告に売渡し、被告は同年同月二六日神戸地方法務局兵庫出張所受付第九三七五号を以て右売買による所有権取得登記を経由した。而して被告会社は株式会社川村自転車製造所と同一場所にあり被告会社の代表取締役石井広次はまた右会社の代表取締役を兼任しているのであるから被告は前述の事情を知りながら右不動産を譲受けた悪意の受益者である。そして原告の株式会社川村自転車製造所に対する右債権額は金九五二、三八〇円であり、右不動産の担保価値は現在約金一、〇〇〇、〇〇〇円であるが、右不動産は全体として一の工場をなしており、これを分割すればその価値は著しく低下するから、右債権を保全するためには、右不動産譲渡行為全体を取消す必要がある。よつて、詐害行為取消権に基き、原被告間において前記会社と被告間の前記売買の取消並びに被告に対して前記所有権取得登記の抹消登記手続を求めるため本訴に及んだのであると述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する。との判決を求め、答弁として、原告の主張事実中、原告主張の日株式会社川村自転車製造所が原告よりその主張のごとき約束で金一、〇〇〇、〇〇〇円を借受けたこと、原告主張の日右会社が右借受金の元金内入として金一五〇、〇〇〇円を原告に支払つたこと、したがつて原告主張の日右債権は元金と遅延損害金とで合計金九五二、三八〇円になつていたこと、その日、右会社がその所有の別紙目録記載の不動産を被告に売渡し、次いで被告が原告主張のごとき登記を経由したこと、右会社と被告会社が同一場所にあり、被告会社代表取締役石井広次が右会社の代表取締役を兼任していることはいずれも認めるがその他の事実はすべて争う。と述べた。<立証省略>

三、理  由

原告主張の日株式会社川村自転車製造所が原告よりその主張のごとき約束で金一、〇〇〇、〇〇〇円を借受けたこと、原告主張の日右会社が右借受金の元金内入として金一五〇、〇〇〇円を原告に支払つたこと、したがつて昭和二五年六月二四日右債権は元金と遅延損害金とで合計金九五二、三八〇円となつていたこと、その日右会社がその所有の別紙目録記載の不動産を被告に譲渡し、被告は同年同月二六日神戸地方法務局兵庫出張所受付第九三七五号を以てその所有権取得登記を経由したことはいずれも当事者間に争がない。そこで、右譲渡が詐害行為であるかどうかを考えるに証人駒井了三(第一、二回)牧野新一、小竹三郎の各証言に被告代表者本人の供述を総合すれば、株式会社川村自転車製造所の経理状態は、同会社が原告より前記金員を借受けた頃からだんだん悪化し昭和二五年に入つて極東物産株式会社に対する金二、六〇〇、〇〇〇円の債務をはじめとして金一〇、〇〇〇、〇〇〇円以上の負債を生じ、積極財産としては僅かに前記不動産があるだけで、商品とか売得金とかも殆どない有様だつたのに前記日時、右会社と同一場所にあり、右会社の代表取締役石井広次がその代表取締役をしている(この点は当事者間に争がない)右会社の所謂第二会社である被告会社に右不動産を無償で譲渡するに至つたことを認めることができる。右認定はこれを左右するに足る証拠はない。そうすると、株式会社川村自転車製造所は原告の前記債権を害することを知りながら、右不動産を被告に譲渡したことは極めて明かであつて、右会社と被告会社との関係は前述のごとくであるから、被告会社が右不動産譲受にあたつて前述の事情を知悉していた悪意の受益者であることもまた明白である。而して、証人小竹の証言被告代表者本人の供述によれば、右不動産は全体として一の有機的な工場をなしており、それが盛に運転されておりさえすれば約二、〇〇〇、〇〇〇円の価値があるところ、現在、被告会社の営業不振のため、ごく一部分しか運転されておらず各施設も廃朽しており、担保価値としては約一、〇〇〇、〇〇〇円程度のものであることを認めることができる。そうすると、右不動産の担保価値は原告の前記債権額を超過していることになるが、前述のごとく右不動産は有機的な工場をなしており分割すれば著しくその価値が低下するから右債権を保全するためには前記譲渡行為全体を取消す必要があること明かであると云わなければならない。よつて、詐害行為取消権に基き、原被告間において株式会社川村自転車製造所と被告間の右売買の取消並びに被告に対して神戸地方法務局兵庫出張所昭和二五年六月二六日受付第九三七五号を以てなされた右売買による所有権取得登記の抹消登記手続を求める原告の請求を認容し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 古川静夫 西村哲夫 田尾桃二)

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